「ついカッとなって怒りが抑えられない…」、「イライラが収まらない…」。子育てや人間関係、些細なことでイライラや怒りの感情に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
怒りを感じるときに「怒ってはいけない」「イライラしないようにしよう」としていませんか?
とはいえ、自分の感情、怒りを我慢するのはNGです。怒りに飲み込まれ、瞬発的に沸き起こった怒りに任せた行動をし続けていれば自責や心に残る後悔の原因となります。
自責や心に残る後悔をしないために『怒ることはいけないこと』『怒らないようにしないと』としようとすると感情にフタをすることになり、無いことにした怒りが積もり積もって我慢の限界が来て爆発してしまいます。
NGにしないにはどうしたら?怒りをどう対処していいのかわからない。と考えてしまう方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、怒りをコントロールし、すぐに実践できる「怒りの対処方法」を紹介していきます。また、「怒りのしくみ」や「怒りのトリガーを見つける方法」「怒りの感情に反応しやすい人の特徴」も踏まえて解説するので、ぜひ参考にしてください。
怒りは人間が持つ感情のひとつ。
なぜ、怒ってしまうのか、それは、脳に伝達されたホルモンの影響で瞬発的に攻撃を選択をします。
危機的状況と認識すると生き物は2つのパターン《逃げるか戦う(攻撃)か》の選択になり、怒りの攻撃の反応が強いと脳からノルアドレナリンとアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンは神経を興奮させ、「闘うホルモン」ともいわれる怒りを感じさせる物質、アドレナリンは筋肉に作用し、身体を戦闘モードにします。
認識とホルモンの作用で「怒り」のスイッチが入るのです。
理性と過去の記憶を覚えている私たちの脳は・目的を達成できない・自分の思い通りにならない時・自分自身や大切な人や物を傷つけられた・危険な目や侮辱を受けた・過去の理不尽と感じた記憶を思い出した時などに、危機的状況と認識します。
怒りが湧いてくるのは、さまざまな心理的、生理的な要因が絡み合っています。その中でも怒りの感情が生じる理由は、大切にしたい、あるいは達成したい目的があり、その目的を達成できなかったり、自分の感情をうまく表現できずにいることがフラストレーションになり、怒りへと無意識に変換するのです。
怒りを感じることを禁止することは、感情を抑圧することにつながり、心理的身体的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。怒りは自然な感情であり、それを完全に禁止することは現実的ではなく、また健康的でもありません。「怒ってはいけない」と抑制すると、怒りのストレスを貯め込んでいきます。怒りを感じているのに解放できないことで気持ちに余裕がなくなっていき、怒りに過剰になったり、些細なことで我慢が効かなくなります。
抑制された怒りが過剰になると、自分の感情に対し適切に表現することや自己抑制ができなくなり、人間関係を壊す、感情のコントロールが難しくなりストレスが強化される、問題に対して解決策が見つけられなくなる、不安やうつ病のリスクが高まる、血圧が上昇して身体に影響が出るなど、自分自身や他人に対してネガティブな影響を及ぼす可能性が高くなります。
「怒ってはいけない」と自分に言い聞かせて、溜め込んだり、我慢して抑え込んで怒りを感じることをNGと禁止するのではなく、怒りを感じたときの対処法を学ぶことが、より健康で幸せな生活を送るための鍵となります。
トリガーを見つけることは、自分が何で怒ってしまうのかを知り、怒る前に気付いて自分自身や他者へ向ける怒りのコントロールができるようになる最初のステップです。
怒りに対する自己理解と感情のコントロールができるようになると、感情が高ぶる前に予防策を講じたり、怒りを適切に処理する方法を見つけることに繋がります。怒りの感情を理解して、自分の怒りのトリガーを特定することは、自分自身や他人との関係を改善し、適切に対処することで、より穏やかでより良い自分とのコミュニケーションを図るためにも重要です。
怒りの裏側に隠れた感情と望みがあり、怒りよりも先に生じています。エネルギーが強い怒りの裏に隠れて自覚されにくいのですが、自分が無自覚に感じている「隠れた感情」を大切にしたい、大切にしてほしい、傷付けられたくない、理解してほしいという本来の望みが怒りのトリガーになっています。
隠れた感情は以下のような種類があります
- 悲しみ: 失望や喪失感からくる感情
- 恐れ: 不安や脅威に対する反応として生じる感情
- 寂しさ: 疎外感や孤独感からくる感情
- 不安: 未来に対する心配や緊張から生じる感情
- 困惑: 混乱や理解できない状況に対する感情
- 恥ずかしさ: 自己の行動や状況に対する評価が低いと感じるときに生じる感情
隠れた感情を見つけていくこと。
ジャーナリングで書きだしていくことで、より明確に見つけやすくなります。
怒りが生じるときには、身体と環境や場面に脳が反応することもあります。
身体的反応は呼吸が浅くなったり荒くなる、発汗する、震えや震えなどがあります。これは交感神経が強く働いて起こる身体反応です。交感神経が活発に働いていると脳は体の変化をさらに調整し、攻撃や闘争への行動をするように意識を集中させます。それにより、視野狭窄が起こり、ますます怒りへの意識が強まるのです。
もう一つは、脳の記憶による怒りの感情の反応です。脳に記憶された過去に起こった「理不尽な目にあった」「怒られた」というシーンを思い出したり、または過去の怒りに関係する環境や場面と似ているシーンに遭遇すると、怒りが沸き起こることもあります。これは、何度も同じパターンを思い出すたびに、記憶をインプットして習慣化する脳の機能が働き、無意識に過去の記憶と現在の起こっていることの擦り合わせが起こり、無自覚で作り出した”同じことが起こるかもしれない”という妄想に隠れた感情が反応して起こることです。
怒りを感じた時に起こる体の変化や記憶の自分の反応を知ることで怒りへの自己理解とトリガーによる反応がわかるようになります
怒りの感情に飲まれやすい人の特徴は、
- ストレスをためすぎている:怒り以外でも我慢が多く、自分でも気づかないストレスが蓄積されています。
- 自分が正しいと思っている:常識やルールを守らなければ、など世間の「正しい」を信じています。
- 感情のコントロールが難しい: 小さなことにも過剰反応し、感情をうまくコントロールできないことがあります。
- 過去のトラウマ: 過去の経験が原因で、特定の状況や人に対して怒りを感じやすくなっている可能性があります。
- 隠れた感情に気付いていない:本来伝えたい、わかってほしい感情に気付けず、怒りに変えています。
気持ちや時間の余裕がない:余裕がないと視野が狭くなり、思考の柔軟性がなくなります。考え方にも偏りが出て「こうでなければいけない」と固執してしまいます。
これらの特徴は、怒りの感情に飲まれやすい人が持つ一般的な傾向です。特徴の中でどれかひとつが当てはまるということもあれば、複数当てはまる場合もあります。
自分のタイプを知っておくと無意識に反応する傾向と対策が取れるようになります。チェック式で知る方法もあります。
怒りの引き金になる出来事は、人によって異なります。
そのためにも、5つの方法をご紹介します。以下の方法を色々試して、自分に合う方法を見つけてみてくださいね。
- 書き出す:怒りの感情やその時の状況、気持ち、怒りを感じた原因を具体的に言語化して書き出してみます。誰にも見せないノートやA4の紙などに書いて捨ててしまえばだれも傷付けません。また、自分の感情や状況、どんなことで怒りを感じたのか、それを客観的に見ることで、冷静に対処でき自分の本当の隠れた感情を見つけやすくなります。書く瞑想ともいわれるジャーナリングがお勧めです。
- ゆっくり深呼吸をする:怒りが湧いているときは、無意識のうちに体も脳も心も緊張状態なので呼吸が浅くなっています。深呼吸することで、脳は副交感神経を活性化させリラックス状態に移行します。身体も心拍数が安定して筋肉の緊張が和らぎ、身体の緊張を解消します。心は急激なストレスが緩み、気持ちが落ち着いてきます。
- ゆっくりと6秒数える:1から6までをゆっくり数える方法はアンガーマネージメントの技術のひとつ。怒りのピークは6秒といわれています。また、脳は一つの動作しかできないので、ゆっくりと数えることに意識を向けることで怒りのピークの6秒を経過させます。数えているときに、知らぬ間に呼吸を止めていることがあるので、呼吸を忘れずに!数を数えるときに、吐いて吸うタイミングを深呼吸と合わせる(1”い~(吐く)ち(吸う)”、2”に(吐く)~い(吸う)”)6秒カウントを同時すると呼吸を忘れないのでおすすめです。
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怒りを数値化する:怒りの度合いを数値化して客観的になれる方法です。自分の中で今まで感じた怒りや不快感を思い出し、それぞれにわかりやすく数値をつけてみます。例えば、レベルを10段階に分け、10~8が言葉や態度で怒りを出してしまう、7∼4で許せない、どうにかしたいと口に出さないが怒りがこみ上げる、3∼1でイラっとしたり腹が立つと感じる、など自分の感覚で分類します。数値化することで自分の状態を客観視でき、そのあとにどうしたらよかったのか、自分は何がイヤだったのか、と次の行動に抜けて考えられるようになります。
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会話で感情を共有する:誰かと感情を共有すると、怒ったこと、自分が感じたことを話すことで自分の怒りについて振り返ることもできます。ただし、この方法は怒りやストレスを共有する相手を選ぶことが重要です。共有する先の目的は承認欲求が満たすことではなく、言語化して自分の怒りの解決策を見つけることです。相手を攻撃するような言葉や悪口は避けましょう。
もう一つ、反応を観察するという方法もあります。怒りの感情が湧き始める前に、感情の変化や身体の反応に注目します。怒りは突然現れるのではなく、何らかのサインがあることが多いので、感情や身体に注目を向けます。脳は同時に他のことを考えることができません。マルチタスクしているように感じることがありますが、一度にひとつのことだけしかできないので、怒り以外の意識に切り替えます。この方法は自分を観察することで、怒りに対する自分の反応を理解するまで時間がかかることがあります。上記の方法で怒りに対処することが慣れてきたら、紙に書くジャーナリングで書いていくと、さらに見つけやすくなる方法です。
これらの方法を試してみて、自分に合った方法を見つけてください。
5.まとめ
長々と書いてしまった記事ですが、お付き合いくださりありがとうございます。
怒りを感じることは誰にでもありますが、それを健康的に解放することで、心身のバランスを保つことができます。「怒ってはいけない」ではなく、【怒りをどのように感じ、どのように表現するか】が重要です。
脳が怒りをラベリングしていることで反応しているため、怒りの原因を理解し、脳のラベリングに気付き、前向きで建設的な方法で対処することが大切だと、アメリカ・オハイオ州立大学の研究チームが行ったメタ分析の結果、示されているそうです。運動で怒りを発散する方法は広く言われていますが、最新の研究によれば、運動だけで怒りを完全に鎮めることは難しいらしいのです。驚きの研究結果ですね。
怒ってはいけないと思い込むのは、社会的な規範や他人に対して怒りを示すことが非礼や攻撃的と解釈される可能性があるため。多くの文化や社会では、怒りを公に表現することは否定的な行動と見なされることがあります。怒りをコントロールすることは、自己管理の一環として重要視されることもあり、怒りを表に出すことを避けるように教育されてきたため、個人の内面では、怒りを感じることに罪悪感を持つ人もいます。
怒りの感情に飲み込まれて、怒ってしまった後にクヨクヨ考えたり自責してしまうのは、怒りを抑制させる教育はあったものの、コントロールする術を教えられていないことと自己理解しようとする機会がなかったから。
怒りをいけないこととして押し殺したり、我慢したり、抑制することが求められることが多いのですが、怒りは自己理解と感情をコントロールすることで扱えるようになっていきます。
今までを振り返って後悔するより、これからを変えていきましょう
もし怒りがコントロールできない場合は、専門家に相談することも検討してみてください。
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